ずいぶんWEBの更新を怠っていた石原です。
今は秋M3で発売する新譜を制作しています。というか、今回新譜出せそう。もう、それが私にとっては大きな出来事です!カッコ悪いことながら、今回形になったCDを手にとって一番嬉しがるのは私でしょう。
二年前に耳の病気になってから、何回も何回もぶり返し、時間的に思うように作曲を出来ませんでした。これ以上耳を悪くすると思うと、恐怖しかなかったから。
あのS村GOUTIさんの一件もあり、何となく耳のこともいいづらく(彼の罪は重いと思う)せっかくご依頼を頂いても、かなりの期間を頂いたり、残念ながらお受けできなかったり。
M3の新作も、何度か延期し、関係者にご迷惑をおかけしたり。色々と活躍されている方を見ては羨ましい思いをしたり、その思いをハーゲンダッツにぶつけたり。
今回ズボラな私としては異常に細かく時間と体調管理をしながら新譜作成にあたり、何とか音楽を仕上げることができました。いっぺんに頑張らないでコツコツやれば(あとお灸とか、耳にいいことを色々併用して)私でも音楽が出来るんだ!と思い、嬉しくてたまりません。
そんなんどうでもいい、新譜はよ、と思ってくださる方(それはそれで有難い)連休中に特設サイトを公開できそうです!
お楽しみにー!してくださっている方が一人でもいますように!
ピアノの表現力に震えた日
6月4日、ヴィクトール・ゴールドベルグさん@トッパンホールのピアノ・リサイタルに行きました。細かい感想はさておいて、忘れていたピアノのダイナミクスと表現力に、心底驚きました。
会場が飽和するピアノの大音量
ピアノって本当に小さな音から大きな音まで鳴るのですね。
ムソルグスキーの「展覧会の絵」のキエフの大門が演奏会のフィナーレだったのですが、地鳴りのような音のうねりに体が包み込まれました。トッパンホールは400席ほどの小さめのホールなので、「会場の大きさが足りない!」と思うほど音が飽和していました。
「作曲家」の音
アンコールで1作品ごとに違う作曲家の曲を弾いてくださったとき、特に表現の違いが鮮烈でした。
「スカルラッティのp(ハープシコードのようなp)」とか、ラフマニノフの時はラフマニノフの音、チャイコフスキーの時はチャイコフスキーの音が鳴る。
チャイコフスキーの「舟唄」のときなんか、聴衆がみんな舟をこいで眠りそうになっていました。笑霧がけぶるような湖上で、本当に舟をゆったり漕いでいる気分になったんです。
「打ち込み」と「生ピアノ」との超えられない壁を感じるのも一興
わたしが普段接している電子ピアノとサンプリング音源では、基本的に音の違いは「強弱」で、「大きさはp(ピアノ)やpp(ピアニッシモ)なんだけど、芯があって強い音」「物憂げなf(フォルテ)」なんて表現が難しい。打ち込みの音もどんどんリアルになっていくと思いますが、本職のピアニストさんの「その作者、その曲、その部分」に合わせて出した音とは比較できません。
当たり前のことを書いているんですが、それでも書きたかったほど衝撃でした。
たまにCDやyoutubeじゃなく、コンサートに行くのはおすすめです。
どの楽器でも、「楽器一つでここまでのダイナミクス、表現が出来るんだ」という衝撃が待っているはず。
去る5/30(金)、懸田貴嗣さんのバロックチェロコンサート@神楽坂ジョルジュ・サンドに伺いました。
楽曲が演奏された当時の演奏会スタイル
バロックチェロが演奏されていた時代の演奏会は、今のように何百人、何千人という観客を相手に演奏していたのではなく、ごく身内の演奏会だった、その雰囲気で演奏したいと仰っていたのが心に残りました。
じっさいにコンサートでは息遣いを感じるような距離で聞くことができ、一音一音の違いを見逃したくないと、耳が音楽に集中しました。かといって緊張感を強いるようなものではなく、音楽に合わせて体を揺らすことも許される雰囲気。
集中しつつもリラックスしている、フロー状態に導かれるようなコンサートでした。
特に当時多かった舞曲形式の楽曲は、実際には踊らなかったとしても演奏者も観客も眉間にしわをよせて真剣に聞くようなものではないそうです。ガヴォットもメヌエットもシャコンヌもブレもパヴァーヌも舞曲だということを知っていたのに聞くときも演奏するときも忘れていました。
古楽器の魅力。便利さを代償に、繊細な違いを
バロックチェロのガット弦(羊の腸)は音が狂いやすく、当時の弓は今の弓と違ってどの音も美しく均一に出すように出来ていないとのこと。現代の楽器のような便利さや安定感がないかわりに、古楽器は繊細な音の違いが生かせるのだとか。
何より曲が生まれた時代の楽器で、今も聞くことが出来るというのは有り難いですね。弾きこなすのがどれだけ難しいのか、想像も及びません!
私もいつか金属弦のハープに挑戦したいのですが、その前に今のネオアイリッシュハープで何ステップも経る必要がありそうです。
道は遠いが、積み重ねが大事!
↓懸田貴嗣さんの「ランゼッティ チェロ・ソナタ集」より
英語レッスン中に、根本的なテーマにぶつかった。
オンライン英会話のレッスンを受講しています。先生の一人が、海外で作曲をしている方でした。自然と音楽の話題が中心となるうちに、「なぜ、あなたは作曲をするのか」「どんな音楽を作りたいのか」といった根本的なテーマに行き当たりました。
これは、日本語でも答えるのが難しい問いでした。何日か考えるうちに、ぼんやりとしたものながら答えが見えてきました。
「なぜ、あなたは作るのか」
最初に浮かんだのは、「好きで続けているうちに、色んな意味で生活の一部になった」という答えです。真実ですが、もっと良く考えると「作らなきゃいけない」という焦りが原動力だな、と気づきました。この焦燥感がどこから来るのか分かりません。わたしが「作らなきゃいけない」なんてことに何の根拠もないのです。今はこのかっこ悪い「勘違いな焦り」を原動力として受け止めるしかありません。いつか違う何かに変わったら、私の中で大きな変化がありそうです。
「どんな音楽をつくりたいのか」
ぱっと思いつく「映画音楽」は、「何の音楽をつくりたいのか」という問いの答えであって、「どんな音楽を〜」に対する答えにはなっていません。何日か考えていて、「日常からちょっとはなれて、思考を自由にときはなつ」という言葉に至りました。
実は、一年ほど前から「時空を旅する音楽」というキーワードを自分の音楽に使っています。使ってはいたものの、どこか居心地の悪さを感じ、少女趣味すぎる気もしていました(というか厨二病ですね)「時空を旅する音楽」というキーワードが本当を何を表してるのか、つまり自分が何を作りたいのか、まだ不確実ながらもひとつ答えをみつけることが出来ました。
たまには立ち止まってみる。そして考える。
何よりも手を動かすことが大事だと思います。ですが、ときには立ち止まって考えるのもいいのかもしれません。
「なぜ、あなたは作るのか」「なにを作りたいのか」

池袋の東京芸術劇場主催のパイプオルガン講座に行ってきました!
芸劇のパイプオルガンはすごい
芸術劇場にはルセサンス、バロック、モダンと調律の違う3種類のパイプオルガンがあり、演奏曲に適したオルガンを選びます。
(ルネサンスオルガンはミーントーン調律法、バロックオルガンは415hz、モダンオルガンはオーケストラとあうように442hz)
ルネサンス・バロックオルガンとモダンオルガンは背中合わせにならんでいて、中華料理のようにターンテーブルで入れ替わるという。
このターンテーブル入れ替わり式は世界でも芸術劇場だけ!だそうですよ。
パイプオルガンそのものがすごい
パイプオルガンっていつからあると思いますか?
私はキリスト教=中世のイメージを持っていましたが、なんと紀元前3世紀にエジプトで水力オルガン「ヒュドラウリス」として誕生したそうです。
(参考:私家版楽器辞典様該当ページ)
紀元前1世紀にローマにてふいごを用いて風力を使うオルガンになりました。一時廃れたものの、中世に教会での楽器として、また世俗でも小型のオルガンとして普及しました。20世紀に入るまで人がふいごで風を送っていましたが(シュコシュコ)、20世紀に入って送風が電力化され、作った音色も記憶できるように。
これだけの歴史があり、改良が重ねられてきたパイプオルガンはまさに「楽器の女王」ですね!
パイプオルガン製作者がすごい
講座では芸術劇場のパイプオルガンを製作した工房の方の講義もありました。
芸術劇場のパイプオルガンのパイプは約9,000本ですが、その全てが手作り。(下は地鳴りのような16hzのパイプから、上は可聴域ギリギリの16,000hz)鉛とスズをスープのように配合してマッチする音色のパイプをつくるのだとか。木は耐久性、美しさから部分ごとに菩提樹、桜、ツゲ、楢などの木を使い分けているそうですよ。(色々調べていたら、芸術劇場のオルガン制作費は3億8千万円との記事に行き当たりました)
オルガンコンサートに行こう
大型のパイプオルガンは制作費・維持費ともに超高額(なにせ楽器の女王)なので、今後どれだけの施設が維持していけるか分かりません。
今がチャンス!今のうちにどんどんパイプオルガンのコンサートに行きましょう!(ジャパネット石原)
池袋芸術劇場では毎月ランチタイムか夜に500円~1,000円のお財布にやさしいコンサートをしています。最新情報ではないようですが、オルガン探検家武田さんのWEBに無料(少額)で楽しめる一覧がのっていました。
楽器の仕組みまでは書けませんでしたが、Wikipedia先生が相変わらずすごかったのを記しておきます。